子供さんにピアノを習わせたいと思われるお父さん、お母さんはたくさんおられますね。
「自分もピアノをやってきたから、当然子供にも。」と思われる方もおられるし、「自分は習いたかったけどできなかったから、子供にはピアノを習わせたい。」と言われる方もおられます。
どちらにしても、子供さんがピアノが大好きになり、将来、素敵な演奏で周りの人を喜ばせたり、自分の人生を豊かにしてくれたらいいですよね。
でも親の気持ちが強すぎてピアノの練習が嫌になり、ピアノ嫌いになってしまう子供さんも現実にはいます。
そうならないために、大事な基礎練習法は以下の5点です。
○連弾やアンサンブルを楽しむ
○ご褒美をもらう
○リズム感を育てる
○読譜力を自然に育てる
今回は、私の経験から、ピアノ大好きな子供を育てるための基礎練習法とおすすめの教本についてお伝えします。
左利きの子供さんをお持ちの方は、ぜひこちらもお読みください。
ピアノ大好きな子供にするための基礎練習その1:好きな時に自由にピアノで遊ぶ
「分離唱」を提唱された故佐々木基之先生が、「ピアノが上手になる子供にするには、いつでも好きな時にピアノで遊べる環境を作ってやるのが一番。」と、よく言われていました。
「えーっ?それが基礎練習だなんて。」と思われた方もおられるかも知れませんが、私も同感です。
なんと言ってもこれが一番です。
音楽は遊びであり(プロになったら仕事になりますが)、楽しみであり、心を解放するものです。
「ピアノは楽しい!音楽は楽しい!」という経験を子供にたくさんさせてあげなければいけません。
私は、上記の佐々木先生の言葉を信じて、子供達が小学校に入学するまではピアノ教室には通わせず、自宅で自由にピアノで遊ばせていました。
小さい子は両手でバンバンと鍵盤を叩きます。
そして叩けば音が出ることを知る。
いろいろ叩いているうちに、叩く場所によって高さが違うことに気づきます。
決して右手だけで弾いたり、一つの鍵盤を1本の指で弾いたりはしません。
うちの長女はよく「アンパンマン」の主題歌をピアノを弾きながら歌っていました。
弾くと言っても、最初は「タンタンター,タタタタタンタン・・・」と「アンパンマン」の主題歌のリズムをジャンジャン叩いているだけです。
でも娘は「アンパンマン」を弾いているつもりです。
そしてそのうちに、右手は少しずつメロディーに近くなりました。
娘にとって、ピアノはおもちゃであり、学習の道具ではありませんでした。
これがピアノを弾けるようになる自然な流れではないでしょうか?
お父さん、お母さん、子供さんをピアノ大好きな子に育てたいなら、どうぞ好きな時に自由にピアノで遊べる環境を作ってあげてください。
ピアノがないなら、電子ピアノでも簡単なキーボードでもいいです。
実は、私は娘達とは全然違う子供時代を過ごしました。
私が幼稚園の時、母が急に私をピアノ教室に通わせるようになりました。
うちにはピアノもオルガンもなく、ピアノ教室で習ってきても紙鍵盤で練習するしかありませんでした。
私の父はなぜか音楽が嫌いで、私が「ピアノが欲しい。」と言っても買ってくれませんでした(涙)
私はクリスマスが近づいた頃、サンタさんに「ピアノが欲しいです。」とお願いしました。
そうしたらクリスマスの日、目が覚めたら私の枕元におもちゃのピアノが置いてありました。
私はすごく嬉しくて、サンタさんにありがとうを言いました(笑)
それから毎日、おもちゃのピアノで練習したんですが、鍵盤が全然足りません(泣)
そして小学3年生くらいの時に、電気オルガンが我が家にやって来ました。
ほんとに嬉しかったです。
毎日練習するのですが、そのうちやっぱり鍵盤が足りなくなりました。
でも私、高校3年生まで、その電気オルガンで練習したんです。
鍵盤がないところは鍵盤のもっと右のただの台を弾いていたんですよ。
ああ、何といじらしい・・・。
そうやって一生懸命練習しているのに、時々父がやって来て「うるさい!」なんて言うんです。
そして大学で教育学部の音楽科に進むことになり、やっとのことでピアノを買ってもらえました。
嬉しかったなあ。
それに比べてうちの子達は恵まれています。
生まれた時からピアノがあり、いつでも自由に弾けたからですね。
ピアノ大好きな子供にするための基礎練習その2:連弾やアンサンブルを楽しむ
かめりこさんによる写真ACからの写真
一人でピアノを弾くのも楽しいですけど、二人で連弾をしたり、あるいは他の楽器とアンサンブルをしたりすると、音楽の楽しみがぐっと広がりますよね。
これも小さい頃は楽譜ありきではなく、人と合わせることを自由に楽しむことが大事なことです。
お父さんやお母さん、お兄さんやお姉さんがピアノが弾けるのであれば、適当に和音や飾りを入れると、急に音楽が深まります。
子供さんが単音で弾いて先生が和音を入れてあげるという教本もあるので、それをやってもいいです。
夕食後に時間がある時は、おもちゃのカスタネットなど何でもいいから持ってきて、みんなで楽しく合奏らしきことをすれば、子供は嬉しくてたまりません。
こうやって、音楽は楽しい!ピアノ大好き!と思える子供が育っていきます。
ピアノ大好きな子供にするための基礎練習その3:ご褒美をもらう!
acworksさんによる写真ACからの写真
がんばった時、何かを達成した時、ご褒美をもらうのは子供だけではなく、大人にとっても嬉しいことです。
まっ、早く言えば「物でつる」ということですね。(笑)
悪いことをさせるために物でつったら、それは絶対にしてはいけないことですけど、その人を成長させるためにご褒美をあげるのは悪いことではありません。
ご褒美の程度にもよりますが。
私はピアノの練習をする時に、横にマーブルチョコレートを置いていました。
特にハノンなどの基礎練習や発表会のために暗譜している時など。
1回弾いたらマーブルチョコを1個食べてました。
自分で自分に小さなご褒美をあげていたんです。
しかも、何回弾いたかがはっきりと分かります。
マーブルチョコを10個置いておいて全部なくなったら10回弾いたことになります。
これは繰り返し練習するのに、とても有効な方法でした。
今考えると、チョコをつまんだ手で再びピアノを弾き出すのはだめですね(汗)
子供さんには「10回弾いたらおやつにしようか。」とか「アイス食べようか。」など、いいのではと思います。
ご褒美は小さなもので、その時にもらえるものでないといけません。
「ピアノの練習がんばったら、今度ディズニーランドに連れて行ってあげる。」などはだめですよ。
また食べものじゃなくても、1回弾く毎にシールを貼るとか好きなキャラクターの塗り絵を完成させていくとか、そういうものもいいです。
シールや塗り絵は子供だけでなく、大人の生徒さんにも有効です。
ピアノ大好きな子供にするための基礎練習その4:リズム感を育てる
acworksさんによる写真ACからの写真
「今の若い人はリズム感がある。」とよく聞きますが、いやいやそういうことはありません。(汗)
中学校で音楽の授業をしてきて、若いからリズム感があるとは決して言えないと痛感しています。
リズム感は育てるものだと思います。
もちろん生まれながらにしてリズム感がすごく発達している人もいると思いますが。
リズム感を育てるためには以下のようなことが効果的です。
音楽に合わせて手を叩く
家でも、子供と一緒に音楽に合わせて歌ったり手を叩いたりしましょう。
それから裏打ちもしましょう。
日本の民謡の手拍子は全部、拍の頭を叩く表打ちですよね。
ですからそれだけで育った大人は裏打ちができません。
時々、コンサートで聴衆が手拍子をすることがありますが、裏打ちをしているつもりがだんだんと表打ちになり、訳が分からなくなることがありますよね。
それは、大きくなるまでいろいろな国のいろいろなリズムの音楽に触れる機会が少なかったからではないかと思います。
小さい頃からいろいろな音楽に合わせて手拍子をし、自分も体で演奏に参加している気持ちにさせましょう。
音楽に合わせて踊る
これも手拍子と同じで、体を動かすことで演奏に参加させます。
元気な音楽、静かな音楽、楽しい音楽、悲しい音楽、それぞれに合う表現がありますね。
体を動かしながらリズム感を育てましょう。
映像を見て打楽器の真似をする
オーケストラでもジャズでもいいと思いますが、演奏の映像を見ながら太鼓やタンバリンを真似させるのもとてもいいと思います。
リズム打ちをする
私は中学校の経験が長いのですが、少しだけ小学校に勤務していたことがあります。
小学校の音楽の授業の始めによくやっていたのがリズム打ちです。
教師が叩いた通りに子供達に手を叩かせます。
教師「タタタンタン」子供達「タタタンタン」という感じで。
だんだん、いろいろなリズムに発展したり、あることばをリズム打ちしたりします。
例えば「チョコレート」だったら「タタタンタ(ン)」
このようにして、ことばとリズムを関連付けていきます。
音符とリズムの関係を理解させる
そのうちに、それをリズム譜にして、手を叩きながら読ませましょう。
(大人)「これとおんなじリズムの言葉、あるかな?」
(子供)「うーん、あっ、ハンバーグ!」
(大人)「ほんとだ!じゃ、ハンバーグって言いながら手を叩こう。」
こうやって、音符を見たらリズムが分かることを体感させましょう。
ピアノ大好きな子供にするための基礎練習その5:読譜の力を自然に育てる
上のようにして少しずつ、楽譜に慣れさせていきましょう。
そうしたら、楽譜は難しいものではなく、ピアノを弾くのにとても便利なものということが分かります。
楽譜を見ることによって、音の高低や長さが分かり、その曲を聴いたことがなくてもどんな曲かが分かるんですから。
ドレミが読めなくても、音符が上がっていたら音が上がるし下がったら音が下がる、中が塗ってない白い音符など小節の中に音符の数が少なかったらゆっくりのリズムで、音符がたくさん詰まっていたら忙しい、そんなことがすぐに分かります。
楽譜って本当に便利!
楽譜が先にあって音楽があるのではありません。
その音楽を伝えるため、共有するために楽譜が必要なんです。
最初から楽譜ありきでピアノの練習を始めたら、このことが分からずに、楽譜嫌いひいてはピアノ嫌いの子供にしてしまう可能性があります。
ピアノ大好きな子供にするためのおすすめ教本を紹介!
TTJさんによる写真ACからの写真
それでは今までにお話しした基礎練習を踏まえて、ピアノ大好きに育てるためのおすすめの教本を紹介しておきたいと思います。
ぴあの どりーむ
は1巻から6巻まであります。
田丸信明さんの編著で、永田萌さんの素敵な挿絵が魅力的です。
進度がゆるやかで、真ん中のドから音域を広げていき、右手と左手を交互に使ってメロディーを弾くので、途中から左手が出てきた時のストレスを感じずにすみます。
入園前の3、4歳の子供のためには「ぴあの どりーむ 幼児版」もあります。
絵本を見ている感覚でピアノの学習に入ることができます。
楽しいワークブックも販売されています。
みんなのオルガン・ピアノの本
は1957年に初版が発行されました。私が生まれた年です(汗)
大変人気のピアノ教本で、親子共々、この教本を使ったという方がたくさんおられます。
これは「ぴあの どりーむ 1」よりも少し難しく、小学生から始める子供さんが多いです。
1巻では両手の5本の指の中で弾ける曲になっていて、はじめは左右交互に使ってメロディーを弾き、その後両手一緒に弾くようになっています。
先生の伴奏譜も付いているので、連弾を楽しむことができます。
4巻まで進んだら、スムーズに「ブルグミュラー25の練習曲」に移ることができるように考えられています。
ちなみに、収録曲は同じで「こどものブルグミュラー」もあります。
今は、いわさきちひろさんの絵画付きのブルグミュラーもあるんですよ。素敵ですね。
ぴあのひけるよ!
に収録されている曲は「きらきら星」や「アルプスいちまんじゃく」など、みんなが知っている曲なので、大変取り組みやすいです。
伴奏も付いているので、楽しく合わせることができます。
1巻は片手奏、2巻で両手奏になります。
あたらしい ピアノのおけいこ
はピアノの楽譜売り場に必ずと言っていいほど置かれている定番のピアノ教本です。
初版は1958年と、こちらもロングセラーの教本です。
この教本も最初は右手と左手が交互に出てきます。
少しずつ音やリズムの種類が増えていくので、自然に読譜の力がついていきます。
少し進んでから先生の伴奏譜が付いています。
後半には聞いたことのある曲も収録されているので、先生と楽しく連弾ができます。
終わりの方にはいろいろな調の曲も入っています。
我が家の子供達はこの教本を使っていました。
これは、とても丁寧に考えられている教本ですが、子供の喜ぶような挿絵はありません。
それで大人の初心者用としても、大変良い教本です。
私も今、70代の男性の方に、この教本を使ってもらっています。
全く楽譜が読めなかったのですが、今では初見で弾けるようになられました。
楽しくすすむ 佐々木ピアノ教本
これは「分離唱」の提唱者、佐々木基之さんが考えられたピアノ教本で、最初から和音で入ります。
最初から和音で入るピアノ教本は、世界でも珍しいのだそうです。
「分離唱」というのは、和音の中から一音を聴き取ることで音感を育てるものです。
私が佐々木先生のお弟子さんに分離唱を習い始めたのをきっかけに、上の3人の子供達は佐々木先生のピアノ教本からピアノのレッスンを始めました。
おかげで音感やハーモニー感を育てることができたと思います。
ピアノは鍵盤を叩くとその音が出る楽器です。
ですからピアノだけをしていると耳を育てることができず、十分なハーモニー感を身につけることができないことが多々あります。
「楽しくすすむ 佐々木ピアノ教本」は、音感やハーモニー感を育てるのに、最もおすすめの一冊です。
まとめ
今回は、ピアノ大好きな子供に育てるための基礎練習法について、そしておすすめの教本についてもお伝えしました。
基礎練習法をまとめると、
2 連弾やアンサンブルで楽しむ。
3 ご褒美をあげる。
4 リズム感を育てる。
5 読譜の力を自然に育てる。
の5つです。
「えーっ?遊んだり、ご褒美をあげたり、本当にこれが基礎練習法?」と思われた方もおられるかも知れませんが、これがピアノ上達のためにとても大事なことなのです。
どうぞ、子供さんを生涯にわたってピアノが大好きな、そして音楽を愛する人に育ててあげてくださいね。
もし、何かお困りのことや質問などありましたら、お気軽にお声を寄せてください。
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