先日、Aさんからこんな話を聞きました。
「私の4歳の娘がピアノを習い始めたんだけど、左利きだから指がうまく動かせなくてとまどってるのよね。ピアノを弾くのに左利きは不利なのかしら?」
私は中学校の音楽教師を退職して、今はピアノを教えたり合唱の指導をしたりしています。
だから私に聞いて来たんだと思います。
ギターなんかは左手用のがありますけど、ピアノはそういう訳にはいきませんから、Aさん、とっても心配になったのでしょうね。
その時は、「左利きが不利なんてことはないと思うよ。ベースがしっかり弾けていい演奏になるんじゃないかな。」と答えたんですけど、こんな悩みを抱えておられるお母さんって、もしかしたらたくさんいらっしゃるのかも。
それで今回は、ピアノを弾くのに左利きは不利なのか?そのメリットとデメリットについて私なりに考えてみました。
ピアノの基礎練習法についてはこちらにまとめていますので、合わせてお読みください。
ピアノを弾くのに左利きは不利?
ピアノを弾くのに左利きは不利か?
結論から言うと、左利きが不利ということはありません。
でも、ピアノのレッスンを始めると、だいたい右手1本からの練習になりますから、左利きの人は指が思うように動かなくて、「やっぱりピアノを弾くのに左利きは不利なのよね?」と思ってしまいます。
そこでくじけないで、左手の練習に入ると、右利きの人よりずっと指がスムーズに動きますよね。
通常、ピアノ曲は、右手がメロディ、左手が伴奏という形のものが多いですが、インベンションと言われるものは右手の部分も左手の部分も同じくらいに主要な旋律です。
ピアノを習うほとんどの人が、バッハのインベンションを弾かされますが、それは、右手も左手も同じように正確に、そして表現豊かに弾けるようになるための練習です。
ですから、右利きの人は左手が右手と同じくらいに弾けるように練習しないといけませんし、左手の人は右手が左手の演奏技術に近づけるようにしないといけないんです。
それで、左利きの方が不利ということはありません。
中学生の時の音楽の授業でバッハの「フーガト短調」とか「トッカータとフーガ」という曲の鑑賞をした覚えのある方、おられると思いますが、あれはパイプオルガンの曲ですけど、やはり右手部分も左手部分も主要な旋律で同じように動きます。
パイプオルガンはそれに加えて両足でも鍵盤を弾きます。
手の10本の指と足2本(さすがに足の指を1本ずつは使えませんから 笑)を独立させて動かすんですね。
左利きのメリットとデメリット
それでは、ピアノを弾く上での左利きのメリットとデメリットを考えてみましょう。
メリット
左利きのメリットは、右利きの人よりも左手の指が自由に動くので、左手部分が早く弾けるようになることです。
一般的に右手はメロディー、左手は伴奏という形のピアノ曲が多いので、伴奏、その中でもベースになる部分をしっかりと弾くことができます。
曲はもちろん旋律が大事ですが、やはりベースがしっかりしていないといけません。
ですから左利きの人はベースをかっこよく弾くことができるということになりますね。
また、一般的にはピアノを習い始めて最初の頃は右手だけ、次に左手だけの練習になります。
私は幼稚園の頃、ピアノを習い始めたのですが、最初は喜んでレッスンに行ってたのですが、左手の練習になった頃、「行きたくない。」と言い出したと母から聞きました。
何回かレッスンをさぼった後、先生から私あてに絵はがきが来て、それが嬉しくてまた行き始めたのだそうです。
そのように、右利きの子は最初は普通にできると思っていたら、左手の練習になり、急にうまくいかなくなって面白くなくなり、挫折することがあります。
左利きの人は、左手の練習に入ったら、それまでよりも自由に指が動くので、その後の両手の練習にスムーズに移れます。
また上述したように、インベンションのように右手も左手も主な旋律の曲は、右利きの人よりもずっと上達するのが早いです。
デメリット
デメリットは、やはり右手の指が自由に動きにくいことです。
そのためにメロディーを上手に表現できるようになるには時間がかかります。
また左手で、ドレミファソと弾くと、一番強く弾きたいドが小指なので、なかなか強く押すことができず、ベースの音が弱くなるということがあります。
でもこれは右利きの人でも同じですね。
それから練習はじめが右手からなので、習い始め早々に戸惑ったり不安になったりすることが多いでしょう。
そこを超えたらあとは大丈夫です。
左利きのためのピアノ練習法
さんによる写真ACからの写真
左利きの人が不安を感じることなくピアノが弾けるようになるための練習法があればいいですよね。
それで、3つの方法を考えてみました。
まずは左手から練習する
まずは右手から、次に左手からという従来の練習法ではなく、まずは左手から練習すればよいのではないでしょうか。
初めてのピアノ教本の右手部分を後回しにして左手のところから入り、次に右手の練習に戻ればいいと思います。
子供さんが左利きで、今からピアノを始めようという方は、先生にお願いしてみたらどうでしょうか。
右手も左手も平等に練習する
どちらが先ということではなく、右手も左手も平等に練習を始めるのです。
私には4人の娘がいて、全員、小学1年生からピアノを習っているのですが、4番目の子は「あたらしい ピアノのおけいこ」というピアノ教本で練習していて、その教本がそういいう練習法です。
この教本は大変人気があり、今もよく使われています。
和音から入る
一般的には指を1本ずつ動かして、簡単な旋律を弾くというところから入りますが、最初から和音で練習するという方法もあります。
まずは子供が左手と右手交代でドミソの和音を弾き、先生がそれに合わせてメロディーを弾くというものです。
すると子供達は最初から和音の響きや人と合わせて音楽を作る喜びを感じ取ることができます。
私の上の娘達3人は、この方法でピアノの練習を始めました。
3人も使ったのでぼろぼろです(笑)
このピアノ教本を作られた佐々木基之さんは、和音の中から1音を聴き取る「分離唱」という方法を考案された方で、子供達が和音で育つと素晴らしい音感が身に付き、自由に曲を作ることができるようになります。
ちなみに我が家の娘達は全員小学1年生からピアノ教室に通い始めました。
それは、この佐々木基之さんの著書「耳をひらいて心まで」の中で「小さい頃はピアノがあって、自由にピアノで遊べる環境が一番だ。」と言われていたからです。
この本は、音楽をやっていく上で何を大切にしないといけないのかを私に教えてくれた貴重な本です。
それで小学校入学前は勝手にピアノで遊ばせていました。
小さい子供は指1本で1つの鍵盤を弾くなんてことはしませんよね。
まずは両手でジャンジャンと弾いて楽しみます。
この期間が本当はとても大切なのかも知れません。
左利きの有名ピアニストは?
左利きの有名ピアニストは世界中にたくさんおられるし、左手のためのピアノ協奏曲などもいろいろと作られています。
でも、ここでは一人だけ、ぜひ紹介したいピアニストがいます。
それは今、話題の反田恭平さん。
情熱的な素晴らしい演奏で、多くのファンの心を掴んでいます。
テレビアニメ「ピアノの森」で、主人公カイのピアノの先生、阿字野壮介のピアニストも務めておられます。
この反田恭平さんが左利きだとは知らなかったんですが、彼のインタビュー記事を読んで、「へえー、そうなのか。」とびっくりしました。
情熱と繊細さを併せ持つ彼のピアノは本当に素晴らしいです。
この反田恭平さんを見ても、ピアノを弾くのに左利きは不利どころか、素晴らしい才能を発揮する人が多いようですね。
【追記】
第18回ショパンコンクールで反田恭平さんが第2位に!!
素晴らしいですね!
反田恭平さんについては、こちらの記事をご覧ください。
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