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【あすという日が】合唱指導のポイント!伴奏のコツと歌詞の意味も解説!

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もうすぐ東日本大震災発生から13年が経とうとしています。

あの日、私は勤務している中学校の卒業式を終え、ほっとして家に帰り、テレビをつけたのでした。

そして信じられない光景を目にすることになります・・・。

「あすという日が」の合唱はその後よく聞かれるようになりました。

私もそれから1年後の卒業式で「あすという日が」の全校合唱をしました。

多くの人を励ましてきた合唱曲「あすという日が」。

今年の卒業式でも歌われるかも知れませんね。

全校合唱を作った時のことを思い出し、「あすという日が」の合唱指導のポイントとピアノ伴奏のコツそして歌詞の意味についてまとめてみました。

「旅立ちの日に」、「いのちの歌」の合唱指導については、こちらをご覧ください。

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「あすという日が」の合唱指導のポイント

まず、「あすという日が」の合唱指導のポイントについてお伝えします。

この曲にはA、B、C、Eと合唱する部分が4つに分かれています。

それぞれの部分の音楽の特徴を捉えて歌いましょう。

Aの部分は優しく語りかけるように

「大空を 見上げて ごらん」で始まるAの部分。

「~ごらん」という語りかけが2回繰り返されます。

ここは「大きな気持ちで、ちょっと気落ちした友達を励ますように歌おう。」と声をかけましょう。

16分音符が使われていて、忙しい感じがしますが、決して慌てないで丁寧に歌うことが大切です。

16分休符や8分休符が大事な役目を果たしていることにも気づかせましょう。

「大空を見上げてごらん」とさーっと歌うのではなく、ことばの間にほんの少しの無音の間(ま)が入ることで、一層心を込めて語りかけている感じが出ます。

16分休符と8分休符は音を出さないということで、ブレスをするところではありません。

それから、この部分は弱起の曲になっていて、つい「おおらを みあげごら」と歌いそうになりますが、言葉の最初の音をしっかりと丁寧に出すようにしましょう。

これは「あすという日が」の合唱の雰囲気を決める大切なところですから、全員で何度も練習しましょう。

音程をつけないで、このリズムの通りに話す練習をするのも効果的です。

また、Aの前半はユニゾンです。

全員の体と心が集まって、一人の人になった気持ちで歌わせましょう。

Bの部分は自分を振り返りながら

Bの部分はゆったりとしたリズムになっています。

一人ひとりに今までのことを振り返らせましょう。

友達とけんかしたり、部活でうまくいかなかったり、あるいは家庭できつい思いをしたり・・・、いろんなことがあったけど、今、生きていることがすばらしい!

そんな思いを共有させたいですね。

ここも弱起の曲になっています。

「いま」の「い」が前の小節の最後の拍になりますが、その前にブレスをして、「い」の音をしっかりと出させましょう。

次の「いきている」の「い」もしっかり歌わせましょう。

「いっしょうけんめい」は一つひとつの音に気持ちを込めてたっぷりと。

そして「なんて」「なんて」「なんて」と3回繰り返しながら、気持ちを盛り上げていきます。

特にソプラノとアルトの2回目の「なんて」の「てー」は3回目の「な」に向かってしっかりとクレッシェンドしましょう。

ここでも、もちろん、「なんて」の「な」の音をしっかりと歌わせてください。

さて、ここまで、ソプラノ、アルト、テノールパートがずっと同じリズムで動いて来ましたが、ここで初めてテノールパートが違う動きをします。

テノールの子達には、「なんてすばらしい」という感動をさらに盛り上げる役目だよ。」と教えてあげましょう。

テノールパートだけが浮かないで、ソプラノとアルトを優しく支えるように歌わせます。

これで聴いている人には「なんて」が5回聞こえてくることになります。

最後の「なんて」はみんなで一緒に。

本当にすばらしいアレンジですね。

「生きることは何てすばらしい!」

このメッセージが心に強く伝わります。

テノールの1回目の「なんて」の「てーー」はスラーで、しかもクレッシェンドです。

Cの部分は堂々と前を向いて!

いよいよサビの部分です。

Bの最後の「すばらしい」の「いー」でしっかりとクレッシェンドをして「あすというひが」に行きます。

ここで気づかせたいことは転調していることです。

変ホ長調(E♭)からハ長調に転調します。

変ホ長調は温かく優しい響きがします。

ハ長調は素直に明るい響きがしますよね。

Bの部分の最後を伴奏を聴きながらを伸ばしていると、きっと心の中がぱあっと明るくなってくると思います。

その明るい気持ちで堂々と「あすというひが」と歌わせましょう。

この曲は、サビの出だしの音、「あす」の「あ」が一番高い音で書かれています。

作曲者がどれだけ、この「あす」を強調したかったかが分かりますね。

聴いている人に向かって、明るい明日が来ることを堂々と伝えましょう。

気をつけるところは、「しんじて」のリズムです。

1回目は「しんーじてー」、2回目は3連符になっています。

またテノールパートが1回目の「てー」でドーシと音を変えます。

これは響きを変える大事な音ですが、あくまでも優しくスラーで。

Eの部分はみんなで力強く!

2番まで歌った後の最後の部分です。

「しあわせをー」は優しく、明るく。

最後の「しーんーじーてー」はみんなの気持ちを一つにして力強く!

最後の音「てー」は弱くならないように、しっかりと前に歌わせます。

指揮者も堂々と力強く。

最後までゴール目指して速度をゆるめず、そして指揮に合わせて一斉に切ります。



「あすという日が」の伴奏のコツ

それでは、「あすという日が」の伴奏のコツについてもお伝えしておきます。

前奏でこの歌の世界を作る

前奏はとても優しい感じがします。

メロディーはほとんど単音で書かれています。

右手の指先からこの温かいメロディーが紡がれることを意識して、心を込めて歌うように弾きましょう。

弱起の曲なので、フレーズの最初の音が4拍目にありますが、この16分音符を丁寧に弾くことが大切です。

卒業式だったら、体育館のシーンとした空気を細く温かいメロディーが包んでいきます。

そして、この歌の世界が作られることをイメージしましょう。

伴奏は合唱を支えていることを常に意識して

どの曲の伴奏でもそうですが、伴奏者は合唱を支えている側だということを常に意識して弾きましょう。

Aの部分の16分音符はポロンポロンとした飾りです。

左手のベースの音に乗っかって軽く弾きましょう。

Bの部分の右手は4分音符が続きます。

粒を揃えて正しいリズムで弾きましょう。

合唱を聞いて弾くと遅くなりがちですから指揮に合わせます。

Cに行く前の1小節は転調して曲の雰囲気が変わる大事なところです。

音を確かめ、一つひとつしっかりと弾きながらクレッシェンドしましょう。

Cの部分は右手も素敵ですが、左手の動きもかっこよく作ってあります。

左手をしっかりと歌うように弾いて、それに右手の音を乗せましょう。

Dの間奏部分は後半で最初の調、変ホ長調に戻ります。

伴奏者も心を入れ替えて、2番の歌い出しの準備をしましょう。

後奏は歌が終わってから2小節しかありません。

リタルダンドやフェルマータがありますから、指揮者と気持ちを一つにして弾きましょう。



「あすという日が」の歌詞の意味を考える

最後に、「あすという日が」の歌詞の意味を改めて考えてみたいと思います。

「あすという日が」の歌詞は、もともと山本瓔子さんの詩集「心のメッセージ しあわせの角度」に掲載されている詩です。

2006年、作曲家で、特に吹奏楽の世界で有名な八木澤教司さんが全日本合唱教育研究会全国大会のために合唱曲を依頼され、山本瓔子さんの詩に作曲をされました。

中学生が希望を持って歌える歌をと考えた八木澤教司さんは、山本瓔子さんにご自分の詩の中からふさわしいものを推薦してもらってできたのが「あすという日が」です。

だからでしょうね。

この合唱曲は本当に詩と曲が一体となっていて、そこに作詞者や作曲者の、これから大人になっていく中学生への思いと願いが込められているのを感じます。

「あすという日が」は中学生が使うクラス合唱曲集の中にも収められていたので、私も知っていて、「いい歌だなあ。」と思っていました。

曲が生まれて5年後に東日本大震災が発生します。

仙台市立八軒中学校合唱部・吹奏楽部の生徒達は福島で開催予定だった声楽アンサンブルコンテスト全国大会に向けて練習中でしたが、それも中止になりました。

コンテストは中止になりましたが、八軒中学校の生徒達は、避難所となった校舎内で、被災した方々に向けて「あすという日が」を歌いました。

生徒達の純粋な歌声とそれを涙を流して聴かれる被災者の方達の様子がテレビで放送され、「あすという日が」は全国で歌われるようになっていきます。

ですから、この歌は東日本大震災をきっかけに生まれた歌ではなく、その前から日本中の若者を励ますためにある歌なのです。

でも、八軒中学校合唱部・吹奏楽部の生徒達がちょうどこの歌を練習していた・・・すごく不思議なことですね。

そのおかげでどれだけの人が励まされたことか。

これからは、それぞれが自分を励ますために、あるいは大事な人を励ますために歌っていったらいいと思います。

そこに、この歌詞の大きな意味があるのではと思います。

今は新型コロナという見えない敵とのたたかいを続けている私たちですが、前を向いていきましょう。

「あすという日があるかぎり 幸せを信じて」「あすという日が来る限り 自分を信じて」



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